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岩波書店
グループ:Book
ランキング:53157
価格:¥ 2,520
ポイント:25 pt
発売日:2007-06
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哲学的人間学の21世紀版
(2008-01-12)
本書は「シリーズ ヒトの科学」の1冊として編まれ、編集には日本哲学会会長を務めた野家啓一氏が当たっている。野家氏はもとより科学哲学が専門であるが、著作は科学哲学を敷衍しながら、哲学の潮流を横断的に解釈した著作が多く、自然科学から人文社会科学までをも豊かに見つめる視線で、著述を展開し、わかり易い議論には定評がある。これも編者一流の碩学的な読書量から産み出された知見の豊かさが裏打ちしている。
さて、本書は動物としてのヒトと社会的な存在としての人を総合的に捉えなおす8編の論文を配し、最終章で執筆者5名での討論会を展開して、哲学的に総合した結論へと導く構成で、優れた一書をなしている。討論の前提として寄せられている諸分野は宗教学、絵画史、生命倫理行動生物学、などである。各論から野家の総論的な人間観を踏まえて、人類の未来が、あるいは人類の終焉を議論しながら本書は閉じられる。20世紀初頭にドイツで提唱された哲学的人間学を21世紀初頭に再度具象的に議論したことが本書の大きな役割である。我々人類の豊かな能力が破綻せずに、永らえる契機を如何に見出すか、その重要な視点を提供しているといえる。味読に値する論文集だが、単著を読むように読みやすい。
サルとロボットとの間に生きる。
(2007-08-19)
「哲学的人間論」を冠せない程に、「人」の概念は、今揺らいでおり、一方では「猿」と、他方では「ロボット」と区別できないそうです。これをめぐった刺激的な座談会が巻末にあり、本書の主調を聞けます。論文は7本。人固有と思われている領域を現代の目で再考しています。
○現状と、哲学史上の「人」の諸定義をまとめています。論者は、行為の理由を「物語る」ことが出来る能力を人特有と考え、新たに人を「ホモ・ナランス」と定義づけています。行為の意味を理解し、その責任を判断するための「物語」。過去の行為と今の自分を結びつける言語的な営みを人特有の行為としています。○神話に見られる人間の起源譚と帰結する終末観が世界的に言及されています。現代でも政治の深刻な問題の根に、伝統宗教の起源論や来世・終末論が、あることが指摘されています。○レンブラントの絵から、彼の人間理解の変化を跡付ける試みです。他画家との比較、当人の絵の修正状況などを手がかりに、彼の人間観が近代化していく様を露にしています。○権利を考察。人間は、事実平等ではなく、あるのは、身体として存在するものとして、欠如としての平等のみ。しかし不平等であろうとも、生それじたいを肯定し擁護する思想が大事との事です。○ヒトに一定水準を認め、それ以下の人を切り捨てるパーソン論の批判的紹介です。○殺人を進化生物学的に説明した試みの紹介です。日本の特有な現象も興味深く記述されています。○人間特有の認識機能とされてきたものも含めて、知識を機能カテゴリーとしてみる認知行動学がより進めば、認識論は自然化するという理論の紹介です。
殆どが、外国の新しい科学理論の批判的紹介です。科学の発達が哲学には、特に現代では脅威なのか。人間固有の領域から自律的人間概念が立てられないのか。過程的知識と分かった上で人間は生き抜けるのか。本書を読むと自分なりの切点に立たされます。

