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アイテム詳細

森 有正

講談社

グループ:Book

ランキング:165065

価格:¥ 714

発売日:1976-12

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カスタマーレビュー

経験と実存、戦後日本の姿  (2005-05-17)
 初代文部大臣であった森有礼の孫である、著者の森有正はデカルト、パスカルの研究のためにパリにおもむき、四半世紀を経た。その旅中に著された本書は、学術書らしからぬ、パリの豊かな情景がまるでこの場にあるかのような臨場感をもって表現されている。内容はといえば、私が受けた印象としては抽象的な哲学書といったようなもので、全体的に著作としてのまとまりがないようにも感じられた。

 しかし、「経験」に対する彼の考察は興味深く、とてもおもしろいものであった。日本を客観的な視点から眺め、戦後日本についての意見は、なるほど納得させられた。
 彼は本書の中でこう述べるのである。「平和であっても自由であっても人間(あるいはユマニスム)であってもそういうものからじかに出発したら駄目」であり、「自己の中の生活と経験とが発展し、進化されて、おのずから」そういったものを定義するようにならなければ、「すべてが軽薄になり、混濁してくる」と。

 つまり敗戦でアメリカが持ち込んだアメリカの経験を、日本の経験として受け入れてはいけず、作者が「変貌」と名づける体験の咀嚼や経験の成熟が必要だと作者は述べているのではないだろうか。「経験はある意味で不断の変貌」なのである。実存と経験の乖離・・・日本人にありがちな状況を、戦後の例を用いてよく表現できていると私は思う。

 また「私」というものがない日本人(語)、例えば滅私奉公といった言葉に代表されるような「私」の消滅した道徳を、「私的な二項方式」の視点も興味深かった。ベネディクトの「恥の文化」と似たようなものであろうか。
 私も日本人として、内的促しを他人のために殺さねばならない時、自分に考える時間を与える必要があるなと感じた。

 個人的には1、2番目の章と最後の章が読みやすく、取り掛かりやすいのではと感じた。