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小学館
グループ:Book
ランキング:2023
価格:¥ 980
発売日:2008-09-05
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カスタマーレビュー ![]()
チャーリーブラウンの哀しさを読むような
(2008-11-25)
評判が良いので買いました。全然琴線に触れない作品もありましたが、恐ろしく恐ろしい作品や琴線に触れまくる作品が確実にありました。読んで良かった!と強く思います。
■繰り返し描かれるのは、アメリカの田舎の子どもの目から見た世界です。幼少期のトラウマをむりやり追体験させられるような、懐かしい甘さとイヤーな感じが入り混じっています。
■昔々、谷川俊太郎訳の「ピーナツ」シリーズを読んだとき、チャーリーブラウンの気持ちがよくわからなかったのを思い出しました。いま、ヒルの短編群を読みながらチャーリーのことを思い出すと、彼の気持ちが手に取るようにわかる気がします。
■子ども時代とは、万能感に溢れ、親に愛されている安心感に溢れ、成長する身体の充実感に溢れた年代であるはずです。しかし、実は、疎外感や欠落感、不全感に悩まされる年代です。まだ小学生なのに人生の悲哀や苦悩を独りで背負ったかのようなチャーリーブラウンの痛々しい姿には、「少年期は辛い」という残酷な真実が描かれていたのでした。少年期真っ盛りの自分にはそれが気づけませんでした。
■いま、僕より少し年下のジョー・ヒルが書いた作品群で、僕ははっきりと気づきました。子どもだった自分が感じていた不安・恐怖・喜び。それらが一緒くたになった子どもの自分を取り巻いていた世界。
■巻頭の作品「年間ホラー傑作選」の主人公は子どもではありませんが、子どもの魂を失わずに育ってしまった大人かと思います。コミコンやファンイベントに集まる醜いホラーファンを嫌悪しつつ、その仲間である人物。こういう人物の心性を描くのも上手い。大好きな作品です。
■チャーリーブラウンが普遍的なアメリカの子どもを象徴する存在だったように、ジョー・ヒルが描く世界も非常に普遍的です。「アメリカの田舎町」というくくりすら軽々と飛び越えて、日本の田舎町に育った僕の気持ちを鷲づかみにするほど。
■もう一つ、映画「ゾンビ」など僕らの人生に欠かせないアイテムが自然に出てくるのが良い。僕らと同じスタンスで、これらサブカルチャーの古典に対峙する作者。彼が僕らとほぼ同世代・同じものを見て育った共感が、感傷とか抜きに伝わってきます。
■既視感・懐かしさと同時に、新たな発見による驚きや恐怖を与えられる短編集です。とくに男の子に読んでもらいたいです。これから大人になる少年と、少年のまま大人になってしまった人に。(汚物とかの描写がちょっとグロいですが、これも子どもの視点で見たもの、と思えば納得がいきます。ちょっと我慢を)
怖さだけでなく抒情的な優しさで読ませるボリュームたっぷりの傑作短編集です。
(2008-11-17)
巨匠スティーヴン・キングの息子である事を秘し己の実力のみで堂々と勝負して大成功を収めたホラー小説界の新星ヒルの瞠目すべきデビュー短編集です。本書は解説を含めて約700頁のボリュームで、日本での初紹介長編「ハートシェイプト・ボックス」だけでは掴めなかった著者のさまざまな傾向の作品がたっぷりと収録されていて、まさに豪華料理のフルコースを味わう気分で大満足出来るでしょう。著者の愛するロック・ミュージック(但し日本風)に例えると、先頃惜しまれつつ解散した国民的バンドSASが初期に勢いで出した2枚組アルバムを聴いた時のような驚きと興奮を思い出しました。本書は基本的には怪奇幻想ジャンルの短編集ですが、意外に普通小説に近いテーマの作品も多く含まれています。本書がアメリカの評論家からも絶賛された秘密を私なりに分析しますと、描かれている恐怖の題材その物は古くから先達の作家達によって連綿と書き継がれ、最早完全に新奇なサプライズを望むのは不可能ですので、ホラーの恐怖性よりも寧ろノスタルジーや抒情味溢れる心情描写の語りが読み手のハートに届いたのではないかと思います。それは決して押しつけがましい教訓や説教調ではなく、社会的弱者や敗残者の目線で非難せずに労わるように書かれていると思います。私はそれが恐怖物語の派手さに隠れた著者の本質であると確信し、読者はホラーにしては非情でなく意外に温かな物語の感触に安らぎを見出すだろうと思います。『二十世紀の幽霊』『ポップアート』『うちよりここのほうが』『ボビー・コンロイ、死者の国より帰る』『自発的入院』『救われしもの』の6編が私には優しさが感じられて印象に残りました。怖さという面では思った程ではなく、残虐な描写に走らず冷静で距離を置いた何処か冷めたような風情を感じます。ともあれ、まだデビューして3年目で30代と若く先行きに大きな可能性を秘めた著者の活躍を今後も注目して見守って行きたいと思います。
ホラー色は薄い
(2008-10-30)
スティーブンキングの次男とのことで、ホラー作品が多く収録されていると思い読んだが、実際はホラー色は薄く、親子や兄弟について描かれている作品が多いように感じられた。
1、年間ホラー傑作選(ホラー小説の編者が応募作の作者に会いに行き恐ろしい体験をする)
2、20世紀の幽霊(映画館に現れる女の幽霊と主人公の出会いを描いた話)
3、ポップアート(風船人間との交流を描いた話)
4、蝗の歌をきくがよい(朝目覚めたらいきなり虫になってしまった少年の話)
5、アブラハムの息子たち(ある秘密をもった父親と兄弟を描いた話)
6、うちよりここのほうが(野球選手の父親と息子の交流を描いた話)
7、黒電話(太った男に監禁されてしまった少年の話)
8、挟殺(ビデオ店に勤める少年が家に帰る途中にある事件にかかわってしまう話)
9、マント(空に浮くことのできる布を手にした少年の話)
10、末期の吐息(人間の最期の吐息を収めた博物館に訪れた家族の話)
11、死樹(木の幽霊の話)
12、寡婦の朝食(放浪者が婦人の家で朝食を振舞われる話)
13、ボビーコンロイ、死者の国より帰る(ゾンビ映画のエキストラの主人公と昔の彼女との交流を描いた話)
14、おとうさんの仮面(少年が家族と出かけた湖のコテージで不思議な体験をする話)
15、自発的入院(弟の作った段ボールの要塞に迷い込んだ不思議を描いた話)
16、救われし者(父親が遠く離れた娘に会いに行く話)
短編小説の為、詳しく書けないが大雑把にストーリーを書くと上記のようになる。
ミステリー小説ではない為、謎が明らかになったり、結末がはっきり描かれているわけではない。また、内容的にはホラー色も薄いので、主人公が不思議な体験をする短編集として読むのが良いと思う。
帝王の息子、登場。やっぱりキングです。
(2008-10-15)
ジョー・ヒルはキングの息子だという。
本作を購読した時点ではその事実を知らなかった。
読み終わったときに、グロテスクかつユーモラスな作風は、
「深夜勤務」あたりのキングに通ずるものを感じ、
「このヒルという作家はキングの影響を強く受けているに違いない」と感じていた。
それはそうだ。
だって息子ですから。。。
物語の枠組みの作りかたというか、
恐怖が発生する装置のボタンの位置というか、
ホラーストリーの段取りがお父さんによく似ていると思う。
要は最近珍しい本格派ホラーを書く人だと思う。
特に冒頭の短編は傑作。
文句なく面白かった。
お勧めです。
600ページを超えるが読み応え十分。秋の夜長にどうぞ。
(2008-10-04)
刊行以来、じわじわとその評判が伝わっている今作、一読したが、じわじわなんてもんじゃない。早急にこの面白さを誰彼となく伝えたくなる傑作だ(笑)。
これは、18篇の短編からなる魅惑的な逸品。身も毛もよだつホラー、悪夢と甘美の薫りが融合する幻想、あまりに奇妙で抒情的な友情、カフカ的なしかしこちらはグロテスクでピカレスクな奇談、、、一編一編のクオリティが高いものが多くて、凄いお値打ち感。それだけに、一気に読み続けると、かなりコアで濃厚なエピソードが多く、翻訳小説特有の言い回しのまわりくどさもあって、どっと疲労感に襲われる。1日2編程度のペースで読み進めるのが健康的か(笑)。9日間に渡って幸福なひとときを過ごせるしね。
レイ・ブラッドベリ、スティーブン・キング、ロアルド・ダールら、かって読み耽った作家たちのアンソロジーの断片が甦ってくる。
誰彼となく、との表現を使ったが、この種のジャンルが苦手な方も居るので、評価は★4つとしたが、ハマル人には堪えられない1冊。

