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新潮社
グループ:Book
ランキング:8287
価格:¥ 660
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カスタマーレビュー ![]()
墓に持っていくもの
(2008-05-01)
他の方も仰っているが 内容が散漫である点が惜しい。散漫である理由はシンプルだと思う。テーマがきちんと絞られていないからだと思うのだ。
題名では瀬島龍三という方に絞っているかのようだが 中では 731部隊の石井中将であるとか ある意味で 話が違う方向に向いている部分が多い。それはそれでエピソードとしては良いのだが そもそも731部隊は それだけで一冊をなすべき内容であり ちらりと紹介するには向いていない。
また これはしょうがないと思うが 戦後の瀬島という方の活躍ぶりも情報が少なすぎる気がする。「しょうがない」と言ったのは そもそも かような国家機密を簡単に書けるわけがないという点に因っている。
瀬島という方は昨年亡くなった。多くのことを墓に持って行ってしまったわけだが それもしょうがないのだと思う。いろんな人がいろんな事を墓に持っていく。僕自身だって 何かを持っていくわけだ。後は 煙となって立ち昇って 消えていくわけだ。
戦後日本の背後にあった真実
(2007-12-12)
瀬島龍三という人物の半生から、戦後日本の裏面史を追う。戦後の経済界で確固とした地位を得ることができたこの人物に、本書では、責任を曖昧にする日本的土壌における典型的なエリートの姿を映し出す。ただし、戦前の官僚・軍の幹部が公職等に復帰したことの背景には、共産主義の台頭という世界情勢を背景としたGHQの方針の転換(「逆コース」路線)があったというのも事実であり、日本的土壌に対してのみ、問題の本質を還元させるというのは一面的過ぎるかも知れない。
また、本書では、戦後賠償ビジネス、FX商戦について等、現代にも繋がる問題の絡繰りが明らかにされる。最後の崔英沢のインタビューはなかなか興味深い。満州の避難民の話は、何度読んでも胸が痛くなる。
日本の戦後は、民主化の名の下に、魑魅魍魎が政治や外交の背後で暗躍した時代でもある。1976年のロッキード事件以後は、それらの力は縮小したものの、結果的にその「呪縛」は1990年代にまで続いていた、というのが平成不況の背後の裏面史であった。そうした時代に比べれば、今世紀に入って以降の政治や外交は、かなり「清らか」なものなのではないか。小泉政権の終焉以降、この流れが今後どちらの方向に進んでいくのか、注目される必要がある。
義父と瀬島龍三
(2007-11-12)
私の義父は、シベリアに7年抑留され戻ってきた。
あの有名な瀬島さんは、私たちと一緒に苦しい生活を送ってきたんだぞ・・と話を聞いた。
「昭和の影のドン」とも言われた瀬島龍三の人生を通して、日本という国の歴史の一頁をみた。
そして思ったこと。
彼は、分析能力・判断力がずば抜けて秀でていたこと。
官僚としての生き方。
その力は、陸軍参謀本部で如何なく発揮され、その後も伊藤忠、そして国家の中枢にいる人たちからも参謀格として重んじられていたこと。
エリート中のエリート。
その生き方は、もし、会社人間として彼を評価するなら本当にすばらしい人間であるのだろうと思った。
多分の今の日本の教育は、彼のような人間を育てるためにあるのであろう。
しかし、読んで感じたことは、多くの人が苦しみ、死んでいった戦争の中心にいたにも関わらず、彼はその苦しみをほとんど感じなかったであろうということ。
彼の配下に多くの部下がいただろうが、ソレはあくまで駒で、駒にもこころがあるということを理解しない。
(理解する意味も持たない)
私の義父は晩年、近所の教会の前を毎日掃除していた。
シベリア抑留がたたって、体をこわし心臓パイパス手術も行った。
彼は、「ロスケにも悪い人もいれば、良い人もいる」といい、
あんなに苦しい思いをしたのに、
生きるために必死でおぼえた片言のロシア語で、ロシアの人を見かけると笑いながら話しかけていた。 近所の教会の神父に「いつも掃除ありがとう」といわれて、「私はお金の献金はできないが、労働でお返ししますよ」と笑っていた。
貧乏ではあった。 余計なお金はもっていなかった。
料亭にもいかなかった。
けれど、彼はいろいろなものをもっていた。
「瀬島龍三ってね」と義父から聞いて、一度彼の本を読んでみたかった。そして、そんな感想を持ちました。
瀬島が何かはわからないまま
(2007-10-23)
思ったよりも内容が散漫な印象を受ける。
「「瀬島龍三」とは何だったのか」という副題は明らかにミスリードで、瀬島についてのレポートは本書の一部にすぎない。
瀬島に代表される幕僚達の戦後の生き方を追い、「責任を取らない日本型組織のあり方」について批判的に検証することが本書の主眼ではあろうが、登場人物も検証されるエピソードも予想外に多いために、事実の検証方法は歴史家のものと比べて(例えば保阪正康氏のものと比べて)薄い印象は否定できない。
例えば、瀬島について言えば、彼のキャリアの中でもっとも疑惑の目が向けられる終戦間際の対ソビエト交渉やシベリア抑留時に何が話されたのか、当事者のインタビューだけを取るだけではなく、インタビューで語らなかったことを追う姿勢がなければ、それほど価値がない。
服部―辻という日本の精神主義を象徴する作戦参謀が、ノモンハンでの失敗以降も軍の中枢にとどまり続けたことは、敗戦の理由を考えるうえで避けて通れない大きな問題だと思うが、だとすれば彼らを庇護し登用した参謀本部のあり方や陸軍の人事制度について深く追うべきではなかったか。戦後の混乱期に志位正人はじめ将校たちがスパイ活動をしていた事実など、本書の主題からして本質的な問題ではない。
結局は、一つのテーマにあわせて色んなエピソードを集めた本ということになるのだが、「沈黙のファイル」を追い、歴史の闇を明らかにしたという印象は持てない。
4名の取材班による連載記事だからか、一冊を通じてのドライヴ感は不足
(2007-09-09)
魚住昭を何冊か読み、力のあるジャーナリストだと感じていた。その魚住が共同通信社での末期に参加したこの仕事は、機会があれば読もうと手元に置いていた。ところが9月4日に瀬島氏が亡くなり、今がその機会だと読んでみた。因みに魚住は、訃報を伝えるTVニュースでインタビューを受け、「彼には自分の戦争体験と向き合い、日本がどこで誤ったのかを語って欲しかった」というコメントを寄せていた。
副題に「「瀬島龍三」とは何だったのか」とあるが、船戸与一が解説で仄めかしているように「「瀬島龍三的なる存在」とは何か」という内容だと思う。瀬島氏自身が多くを語らない以上、このXの内実を浮かび上がらせるために外縁を塗りつぶしていく記述スタイルとなり、その結果、瀬島氏その人よりもう少し広く「瀬島的なるもの」が姿を現した、というところか。瀬島という固有名詞は、「戦中戦後の日本の歩みを象徴している」という意味で選ばれた(p306)。
ただ、先行レビューで731部隊の話と瀬島龍三が結びついていないという批判があったが、45年7月に関東軍参謀に転出し敗戦処理に携わった以上、731部隊の撤収・隠蔽工作に関与したと考えるのが自然だろう(p133)。仮に主導したのでなくとも、何が起こったかを把握していたはずだ。本書が問うているのは、だから瀬島氏の「沈黙」に他ならない。
読了後に、瀬島氏が95年6月の自衛隊幹部学校における軍事史学会に招かれて講演を行う冒頭場面を再読した。軍事関係の政商として戦後の地位を築いた人間が、自衛官に「大東亜戦争」の義を説くグロテスクさが、より鮮明に感じ取れた。

