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アイテム詳細

佐瀬 稔

中央公論社

グループ:Book

ランキング:24824

価格:¥ 980

発売日:1998-05

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残された山靴―佐瀬稔遺稿集

カスタマーレビュー

長谷川恒男という男を正面から描き出した一冊  (2008-11-19)
登山をしない私が初めて読んだ登山家の評伝だったが、登山家というよりも長谷川恒男という一人の男の生涯が見事に描かれた素晴らしい一冊だった。

私自身が登山をしないということが理由であったにせよ、過去に登山家が自ら書いた登頂記を読んだ際に専門的過ぎてつまらない、あるいは行間から自己顕示欲が滲み出ていて読んでいる方が興ざめしてしまうという感じがして堪らなかったので、登山(家)を描いたノンフィクションは避け、同じ山を描いているのであればフィクション(ノンフィクションを題材にした小説や漫画)を選んで読んでいたのだが、この作品は実によかった。山の素人は作家が手掛けた「評伝」を読むのがいいということなのかもしれない。

ただ、いくら作者の力量があろうとも、評伝される側の人物が人間的な魅力(それは善の魅力、悪の魅力、善悪の区別の魅力のつかない悪魔的な魅力を指す)がなければ、評伝としては退屈な作品となるはずだが、この作品は、人間としての長谷川恒男の長所・短所を素直に見詰めた上で彼の一生を書き上げた作家佐瀬稔の力量、そして描かれる側の長谷川恒男の人間的な魅力が見事に絡み合った素晴らしいものだ。彼が人間的に成長していく過程を読むにつれ感動すら覚えた。

自ら山を登る人のこの作品に対する評価はわからない。しかし、少なくとも私にとっては長い読書歴の中でも忘れられない一冊になった。

世界屈指の登山家  (2008-05-06)
お馴染みの佐瀬 稔(著)のシリーズ。
森田勝などシリーズを通して他の登山家が登場するので、合わせて読むと登山家の対比や登山家同士の葛藤ややり取りが垣間見れて面白い。

世界屈指の登山家として世界に名をはせた人物。
スポンサー活動、講演活動、著書出版など、登山そのもの以外でも数々の活動を行ってきた点でも他の登山家と異なっている。
上記のような広範囲にわたる活動から、彼自身について記述されたものは多く、彼を知る手がかりは多い。
元来優しい人間ではあるが、登山家に多く見られるように我が強く妥協を許さない。
目立ちたがり屋で、どこか尖がったところがある性格。
森田勝と重なるところがあるが、お互いライバル視していたようだ。
特に、森田勝と同じ時期に登ったグランドジョラス登攀で、彼を意識した場面が記述されている。

4年ほど前にパキスタンのカリマバード(フンザ)を訪れたが、そこにあった長谷川恒夫とその相方の墓を思い出す。
そこからは、最後雪崩に遭って命を落とした両名にとって最後の山となったウルタルUが見える。
当時、その山がそこまで技術的に難しく、また長谷川恒夫という人物が世界に名を馳せた人物であるとは思いもしなかったが。

ちなみに、某書では彼をモデルにした似たような登場人物名で描かれているという話ではあるが。

人間長谷川恒男についてもう少し掘り下げられていると良かった  (2007-11-22)
世界でも指折りの登山家 長谷川恒男にまつわる話。
同著者の森田勝にまつわる書籍(狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死 (中公文庫) )と重複する箇所が多い。
人間長谷川恒男についてもう少し掘り下げられていると良かった。

長谷川恒夫についてもう少し詳しく書いて欲しかった  (2006-11-13)
長谷川恒夫が生きた時代の山岳界についての記述が多く、私はもっと、長谷川恒夫自身のエピソードを知りたかった。
長谷川恒夫を知る知人の話ではとてもやさしい人だったと聞いています。本書の中にも人懐っこい人だとの記述もあります。私は彼の人柄を表すエピソードをもっと知りたかった。

又、その時代の山岳界について何も知らない私にとって、話が断片的で良く分からない部分が多々あり、小説と異なり事実をつなぎあわせなくてはならないところにノンフィクションの難しさがあるように思えました。

私が長谷川恒夫を知ったのは14年程前です。長谷川恒夫カップの第一回目が行われた時に、私の仲間、といっても、山岳ではなく、自転車を中心としたトライアスロンの仲間がすごいレースが出てきたという事で、レースに参加するという話を聞いて長谷川恒夫を知りました。
又、最近、若い人たちが長谷川恒夫カップに興味を持つ者が出てきたので、長谷川恒夫がどのような人だったのか、知りたくこの本を読みました。

ヒマラヤのウルタル峰でなだれで死んだであろう長谷川恒夫をベースキャンプから望遠鏡で見た時の昌美さんの思いと、いっしょに登攀した星野の奥さんの富士山での事故の場面を読んで登山家とはなんとあわれと思いますが、自分の命を顧みずに自分の思いを貫き通すその思いの強さといいますか、子供のような健気さを感じ、私も分かるような気はしますが、私とは全く別の次元の思いであろう事を感じました。

最後に読み終わって、超一流登山家の壮絶な生き方が私の中に残りました。これもやはり登山家のノンフィクションだからでしょうか。

長谷川恒男という人間の魅力  (2005-07-22)
私は山を登る人ではない。
そんな私が登山家である長谷川恒男の本を手にしたのはパキスタンのフンザでの話があったからである。
長谷川氏はフンザ近郊のウルタルという山で遭難死したのであるが、晩年はフンザに学校を建てるなどの貢献をし、フンザでは最も有名な日本人であった。そのような経緯でこの本を読んでみようと思ったのである。

登山家という人種はやはりある種の変わり者、偏屈ものというイメージがある。まさに「山の男」のイメージである。
長谷川氏もその範疇に入る人物である。高度成長期の少年・青年時代の挫折と山との出会い、山の世界での成功からさらなる魅力と成功を求めての遍歴・・・長谷川氏の人生と共に他の稀有な行動力と精神力を持った登山家たちとの邂逅・遍歴をまじえながら昭和の時代の「山の世界」についても丹念に描き出している。

私が一番印象に残ったのはやはり長谷川氏の成長と変化であろうか。
当初は自分の実力に自負のある若者にありがちであるが、他人を蹴落としてでも、一種のだまし討ちに近い形であろうと地位と名声を求める姿から、一種の権威となり、自分を主張するだけでなく、後進を育てたり、外の世界への貢献を果たしていくことになる後半生といった変化の姿である。また、さらなる高みを求め、体力の衰えと戦いつつ、歴史に名を残そうと奮闘する姿である。

山の世界というのは私とは縁遠い世界であるが、長谷川恒男という一個の人間の魅力を知ることができたのは望外の喜びである。