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光文社
グループ:Book
ランキング:6266
価格:¥ 998
ポイント:9 pt
発売日:2006-05-17
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経済学の素人でも、十分楽しく読める。
(2008-07-21)
人間の感情を重視する経済学、「行動経済学」についての本。
いくつもの思考実験や具体例を通して、
いかに人間の行動は合理的とはほど遠いか、考えさせられます。
私は標準的経済学のことはわかりません。
しかし、そんな私でも上記の具体例が興味深く、楽しく読むことができました。
千円手に入れたときの喜びよりも、千円なくしたときの悲しみの方が大きくありませんか?
食べ放題の店に行ったら、お腹が苦しくても元を取ろうとしませんか?
600人中、200人が死ぬ政策よりも、400人が助かる政策の方がよく思えませんか?
ピンと来た方、オススメです。
400ページと新書にしては厚いし、内容がやや難しいところがあるので、
サクッとは読めないかもしれません。
しかし、何度も目から鱗が落ちるし、実生活で役に立つ知識も多いです。
飛ばし飛ばしでも、ぜひ読んでみてください。
指摘されないのか?クイズの矛盾
(2008-07-13)
全体的に高い評価を得ていますが、いくつか思考の掘り下げが安易かと感じる部分がありましたので、評価を厳しくさせていただきました。
「詭弁」とも思われる論理誘導がある部分に関してどうしてもひっかかりを感じます。
いくつかあるのですが特にわかりやすいのが下記の2点。
1)文中に出てくる下記のクイズの設定に疑問
「ある致命的な感染症にかかる確率は1万分の1である。あなたがこの感染症にかかっているかどうか検査を受けたところ結果は陽性であった。この検査の信頼性は99%である。実際にこの感染症にかかっている確率はどの程度であろうか?」
著者は、上記のクイズを多くの人が間違う事実をもってして「人は事前情報を軽視する(この場合は病気の感染確率が事前情報)」としていますが、この問題にはちょっとしたトリックが隠されています。
この問題設定では、読み手は”直感的”に「検査の確立は絶対に普遍だが、感染にかかる確率は1万分の1で常に一定なわけではないよな?(その人が接触した人や事前の健康状態によって感染確率が変わるよなあ)」と感じてしまわないでしょうか?
たとえばもしこの問題が、
「あるコップの水を飲むと必ず1万分の1で病気に感染するが、その水を飲んだ人間が・・・」と設定されていればどうでしょうか?
これでも同じように人は事前情報を軽視するのでしょうか?
行動、認知を限りなく正確に推し量ろうとするのであれば、測定したい部位以外で余計なバイアスがかかりそうなリスクはすべて排除すべきではないでしょうか?
著者はあらかじめ人間が直感的に事前情報を軽視してしまいそうな問題を引用して「ベイズ・ルール」を説明しています。
くりかえしになりますが、「事前情報」があやふやな問題ならば、「事前情報」を軽視してしまうのは当たり前でしょう。詭弁にしかなりません。
2 著者が挙げた下記の例があまりにも安易
ある雑誌に「会社の社長の70%が毎日日記をつけていた。だから日記をつけるのは成功の秘訣」と書かれていたことを著者は批判しているのですが、
そのためにあげた例が「もし会社の社長の90%が毎日歯磨きをしていたら、歯磨きは成功の秘訣といえるのだろうか?」というものがありました。
日記のロジックを批判することそのものは間違っていないと思いますが、そこに出してくる材料が「歯磨き」とは、学者としてはあまりに安易です。日記の文脈に説得力がある(ようにみえる)のは「日記」が比較的多くの人にとって「近いようで遠い」存在だからです。「歯磨き」と「日記」はその観点で、文脈の中における本質的な意味がまるで違ってしまいます。
意味が違った文脈ならば、人が受け取る意味が異なるのは当然ですよね?
「歯磨き」のかわりにもっとこう「毎日トイレで新聞を読んでた」みたいな(笑)、もうちょっと気の利いた例を出せなかったのでしょうか?
このように、著者は「本質的な意味で重要な文脈」を比較的安易に摩り替えています。ご本人も気づかれていないのかもしれませんが、「認知科学」にも近しい分野のなかで、前提条件の条件設定が雑であることが残念です。このことにレビュアーのどなたも触れていないことが不思議でなりません。
また、学者さんですから仕方がないと思いますが、新書として考えると、あまりにも文章が不器用です。
新書のレベルを超えた良書
(2008-06-21)
新書版ですが内容は非常に濃い本です。行動経済学の基礎的な事項が分かり易く、しかも、理論的に説明されています。特に参考になるのは本書の巻末の「主要参考文献」です。日本語で書かれた本の場合、ほんの申し訳程度の参考文献しか挙げられていないものが(専門書を含め)数多く見受けられますが、本書では英語の文献を中心に数多くの参考文献が挙げられているので、これを参考により深い学習ができると思います。
意欲的な学習者をより「高み」に導びくという、入門書の原理原則を忠実に守る非常に良心的な本だと感じました。
既存の経済学を見直す
(2008-05-18)
既存の経済学ではその議論の前提として,
完全に合理的な経済人を置いていますが,
それは少し考えてみればおかしいと分かるもの。
行動経済学は人間の感情の及ぼす影響を考えに入れ,
人間の行動の本当の姿を調査しようというものです。
この本には非常に情報が詰め込まれており,
多くの行動経済学やその周辺での議論が詰め込まれています。
まだ完全には普及しきっていない分野での入門書,
あるいは紹介書的な位置づけとしては非常に有用であると感じます。
この本単体では学問的な理解にとどまるかもしれないですが,
既存の経済学と組み合わせて考えてみたり,
あるいは心の持ち方といったことと併せて考えていくことで,
学問だけに限らず,実用の面までにも役立ち,
様々な可能性をもった議論展開が可能になるように思います。
不合理ゆえに吾信ず―「勘定」から「感情」へ
(2008-05-16)
はじめに、この友野典男・明大教授(当書刊行時)の著書は、“新書版”ながら397頁に上り、サクッと読むには、少々しんどかった、というのが私の偽わざる感想だ。特に、第9章「理性と感情のダンス」となると、「感情の働き」や「脳神経科学の方法によって探究しようとする『神経経済学』」(本書P.324)、あるいは「進化の力」といった課題を展開するのだけれども、これらの内容を詳細に論述するだけで、優に1冊の“新書”が書けるのではないだろうか。実に「勿体ない」ような気がする…。
さらに、もう少し第9章を眺めると、「より良い意志決定のために重要な役割を果たしているのは感情だということが、最近の心理学や脳神経科学の発展により明らかにされつつある」(同P.324)みたいだ。そして、私に関しては、標準的経済学が想定する「経済人(ホモ・エコノミカス)」―「感情に左右されず、もっぱら勘定」で動き、「市場は重視するが、私情や詩情には無縁」で、「金銭に触れるのは好きだが、人の琴線に触れることには興味がない」(同P.325)人間―を演じ切れそうもない。
ところで、年金の問題について、たとえば「個人が自分で貯蓄すれば十分だし、無年金者を防ぐには民間の年金に強制加入させればよい」といった論調がある。すなわち経済教科書的な人間、つまり自分の将来を確実に予見し、未来の消費行動等を計算しうる“超合理的な経済人”であれば、せっせと蓄財に励むのだろう。しかし、本書にある「現在志向バイアス」をもち、「時間非整合的な行動」をとる“生身の人間”に、それは殆ど無理というものだ。だからこそ、公的年金制度とその財源調達手段の議論が必要なのである。

