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アイテム詳細

ポール・オースター
柴田 元幸
Paul Auster

白水社

グループ:Book

ランキング:48567

価格:¥ 998

発売日:1993-10

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カスタマーレビュー

小説表現におけるミニマリズム  (2008-10-23)
 「言葉というものを大切に思うこと。書かれたものに自分を賭けてみること。そうしたことが他の要素を圧倒するのであり、それに較べれば、自分の人生などごくささいなものに思えてくるのだ。」(本書50ページ)

 言語表現に対するこのような愛情の下で、この小説のストーリーでは、批評家の主人公(読み手)が幼馴染の天才小説家(書き手)に殺意を抱きつつアイデンティファイしていく。両者ともに家族や生活を削ぎ落とし、自己自身のアイデンティティや存在さえも消し去りながら、「書くこと」「読むこと」に一体化しようとする。特に両者が狂気スレスレまでいって対話する後半は読み応えがあるが、同じようなテーマで語り手が消え去った「シティ・オブ・グラス」と対照的に、この小説では現実=こちら側の世界に主人公がギリギリのところで引っかかっているところが面白い。その点で、この小説のラストにほのかな「希望」を読み出す読者もいるだろう。(訳者もその一人。)

 「書くこと」に自己言及した小説を書いた作家は沢山いるが、不可能だと知りつつ「書くこと」と「読むこと」、それ自体を掴もうとしてミニマリズムを展開したこの作品は、奇跡的なことにストーリーに厭きがこないどころか、ミステリー仕立てで面白い。文句なしに初期オースターの傑作として文学史に残る作品でしょう。これからも、何度か繰り返し読みたいと思います。

ただカフカ的なだけじゃない  (2008-05-10)
「ファンショー」を「フィクション」に読み替えて、
オースターがフィクションの創作に関して何かを掴むまでのプロセスの
最終段階の物語としても読めます。特に後半、特に第8節の途中以降は
著者が書く際、「フィクションは……」などと書いて後から
「フィクション」を「ファンショー」に一括変換
したのでは?と思うぐらい(笑)そのように読むと
いろいろおもしろいことを言っているので是非試してみてください。

人間の危さや脆さを描く傑作  (2006-12-03)
本書はThe New York Trilogyの最終話だ。

この3部作は何れもある人物に関わる謎を探ることを目的とする推理小説のような体裁を取っているが、読み進めるにつれて実は謎を追い求める主人公の内面の変化がテーマになっていることに気がつく。

主人公は最初は職務としてターゲットとなる人物を尾行したり、過去を調べたりするのだが、次第にターゲットと自己との境目が曖昧になり、謎を探る行為は職務ではなくそれ自体が自己の存在意義と化していく。

外面からは安定しているように見える人間の心に潜む危さや脆さが見事に描き出されており、楽しく読める作品ではない。だが最近のポール・オースターの円熟した作品とは異なる実験的な要素がちりばめられた初期の傑作だと思う。

傑出したラストのリアリズム。  (2006-03-12)
オースターの初期作品の中で、頭ひとつ抜け出ている印象の本書。
書き出しからラストまで、どこをとっても好きなのは、ちょっと贔屓のしすぎかもしれませんが。。

オースターのストーリーの書き方は偶然に拠り過ぎているって話がありますが、私はそれよりも、幸福はいつまでも続かない、ハッピーエンドでは終われない物語のリアリズム性の方に、オースターらしさを感じます。
この作品のラストは、そういう意味でものすごく印象に残っています。
曖昧な結末の映画を見たのに、考えさせられるのではなく、理屈ではなく、胸がうずくと言えばいいのか。
数あるオースター作品の中でも、この作品のラストは群を抜いているように思えます。
未読のオースター好きの方には是非読んでいただきたいです。

ノック、ノック  (2005-03-31)
実に小説らしい小説だと思う。
もしくは物語らしい物語。
サスペンスフルでスリリングでどことなくカフカチックで、読んでいて引き込まれる楽しみがある。
この人の小説はこのあたりから物語小説としての魅力を増し、「ムーンパレス」、「リヴァイアサン」、「偶然の音楽」、「ミスターヴァーティゴ」あたりの完成度の高い作品に結実していく。
作品として決して完成度が高いとは言えないまでも、それは筆者がその後さらにすばらしい作品を生みだしたという事実をすでに知っていることから来る相対的な評価でしかなく一つの作品としては十分に楽しめる。
私は読後、村上春樹の「羊をめぐる冒険」を思い出した。
二つの物語が探求したものは果たして同一のものだったろうか、と考えたのだ。
この「鍵のかかった部屋」、もちろん村上ファンのかたにもお薦めです。