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アイテム詳細

若桑 みどり
皆川 満寿美
加藤 秀一
赤石 千衣子

青弓社

グループ:Book

ランキング:214638

価格:¥ 1,680

ポイント:16 pt

発売日:2006-08

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ジェンダー・フリー・トラブル

カスタマーレビュー

多くは正当な主張の本  (2006-09-23)
バックラッシュの主張がよく分かり、
それに対応する問題意識も高まりました。

1.「ジェンダー」を「『社会的文化的性差』と翻訳するのは誤訳」と主張しているのは、
シカゴ大学の山口智美氏ですが(『バックラッシュ!なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?(281p)』)、
ただ一人の主張であり、そのいわゆる「誤訳」が使われているからといって、
本全体の信頼が揺らぐことはないです。
(山口氏は『「性差」という訳は的外れもいいところ』とまで言う)

上野先生によれば「ジェンダー」は国際的に認められた学術用語であり、
下の方の「何かの省略形」という説明は「?」ですけれど。

2.この本にあるgender-freeの検索結果は沢山ありましたが、
文章の書き方的なものが多く、ジェンダーフリー運動とはあまり関係がないようです。

3.医学の上でのgenderは「Gender differences in treatment of heart failure and acute myocardial infarction」
(急性心筋梗塞における治療の性による違い)という論文が手元にあるため、
確かにgenderは医学の上ではSEXとの意味の差がほとんどありません。

また、ジーニアス英和辞典にはgenderの第2義として、
『<<略式・古>>(生物学的)性(sex).』とも書いてありますので、
genderは古くから生物学的性の意味でも使われていたようです。

しかし、そんな細かいことにとらわれずに読み進むならば、
女性が生き易い世の中になるために有益な本だと思います。

買ってよかったと思いました。

誠実な姿勢での評価を  (2006-09-09)

1.「ジェンダー」を「性別」そのものの意味で使うこともあれば、「(社会的)性差」の意味で使うこともある、というだけの話。確かに厳密には「ジェンダー=性別そのもの」「ジェンダー・アイデンティティ=性別同一性(性自認)」「ジェンダー・ディファレンス(性別差、ジェンダー差)」「ジャンダー・ロール(性別役割、ジェンダー役割)」とすべきであり、これらを省略形で単に「ジェンダー」と呼ぶのは不用意かつ安易な誤解の呼び水になりやすいので望ましくはないが、間違いとか誤訳とかいう種類の問題ではない。また日本語の問題として「差」より「差異」が望ましいが、この点にこだわるのは揚げ足取り以上の意味はない。

2.googleで"gender-free"を(ハイフンも含めて)フレーズ検索したら12万9千件ヒットしましたが……。いずれにしても細かい点。

3.驚きの新説かつ珍説。WebsterにもOEDにもそんなことは書いてありません。ただし、Websterには、「もしかして?」と思える例文(「胎児」という語を含む)があるので、たぶん何か独創的な勘違いをされたのだと思う。
 大まかに言って、genderという語は大昔は「種」の意味、近代では文法的性別(男性名詞、女性名詞、中性名詞)、現代に「性別」という意味に転用されたという事実に異論を唱える辞書、文献を私は知りません。

「ジェンダー概念」の危機的状況。  (2006-08-25)
「ジェンダー概念をめぐる危機的状況」を正直に表現する、凄い本です。

いまさら論者がジェンダーの語義を云々している時点で、
真正直に「ジェンダー概念」の危機的状況を正面から紹介している本だと言えます。

1.「ジェンダーを<社会的性差>と翻訳することは<誤訳>」と指摘されて久しいが、
上野氏ですら、最初「性別」と用いながら途中から「社会的性差」と誤訳を使い始める。
ジェンダーロールは<「差」の役割>ではないのに。
(「差」・「差異」とは、例えば「10-7=3」の「3」の部分だ)

2.「gender-free」で検索したら「10万件ヒットした」とあるが、検索方法ミスである。
この検索方法では「gender(男女性)」と「free(無料・自由)」が、
WEBページ内でバラバラに使われていてもヒットする。
(gender.で文章が終わり、次の文頭がFreeから始まる、など)
「ページの重複を除く」という正しい検索方法をとれば、
一見、更新の重複で10万件に見えた検索結果も800件弱になる。

3.「社会的文化的性別の意味のgenderが普及して、近年では生物学的性にも使われるようになった」
という主旨の「間違った事実認識による記載」があるが、事実は完全に逆であり、
もともとgenderは生物学的な男女性のことである。
「gender」はgene(遺伝子)、genital( 生殖の)と語源や語根gen-を同じくし、
医学の分野でもgenderは母親の胎内の「胎児の性別」を表現する際に使われてきた(Webster)。
女子スポーツでの遺伝子検査は「gender verification」と表記する。

総じて、この本は日本における「ジェンダー概念」の混乱を正直に露呈していると言い得ると思う。
また、論者同士による論文の「相互チェック」の必要性を強く感じた。

「ジェンダー概念」の危機とその周辺状況を知りたい人にとっては、これ以上ない良書。