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中央公論事業出版
グループ:Book
ランキング:30690
価格:¥ 1,680
ポイント:16 pt
発売日:2008-01
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カスタマーレビュー ![]()
イザベラ・バードの内なる未踏路
(2008-03-25)
真に不思議な著作。バードの日本に関する紀行文は全て紹介されていると思われるかもしれないが,実は,北東北の旅の記述から,かなりの部分が削除されているのだという。だが,この削除の忘却は,原書でも第二版からは,痕跡が失われていて,その形で一世を風靡した超ロングセラーになっている。だから,ある意味では削除は本書の評価にとって本質的ではないか,あるいはむしろ改善と見えるかもしれないが,それは違う。(1)バードは飽くなき好奇心で維新初期の日本を眺め,資料に当たり,日本人にとっても今や忘れられた日本の姿を描き出している。正直,それは必ずしも正しい観察,特に正しい記述ないし解釈ではないものも含まれるのだが,しかし,それを含んでも,彼女の眼に触れた「異教徒」の国日本の有様を彼女の感嘆・驚異に載せて示しているという点で,全ての記述が興味深いものだし,(2)また特に,彼女が血肉となっているクリスチャンの視点から日本を観察し,かつ批判(時には評価)を交えて語っているのだが,不思議なことに,削除部分は,この二点に関する特徴的な部分に関わることが多いのだ。だから,確かに削除版はある意味で際どさを除き,平穏な色調にはなっているが,以上のような本来の味付けが欠ける点がある。訳者は,以上のような削除部分を完全に網羅して取り出して訳出するとともに,それらの部分が収まるべき原典の部分を高梨訳の邦訳の中に位置づけるという編集作業も綿密に行っている。これをもって,バードの日本紀行は完全に再現されるのだ。しかし何より,そうした学術的な意義はさておいても,実に記述の興味は部類のもので,他の訳との関連を見なくても興味深い読み物になっている。
原書タイトルは「日本の未踏路」で,バードは敢えて日本の内奥を,通訳一人を従えて踏み分けていくのだが,それは実際の旅程のことでもあれば,また異教徒の文化への踏み込みでもある。しかし同時に,この本ではもう一つの「未踏路」つまり著者レディー・トラベラーのバード自身の心の内奥への旅も,本書でいっそう明らかになるのだ。一読に値する好著。

