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未知谷
グループ:Book
ランキング:334244
価格:¥ 2,100
ポイント:21 pt
発売日:2005-02
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カスタマーレビュー ![]()
哀切きわまりない短編です
(2007-08-05)
チェーホフの短編の中でも、その切々たる哀感がたまらない作品です。
重病の妻を抱える、腕のいい棺おけ職人が主人公です。いっこうによくならない暮らし向きに「○○ルーブルの損失がある!」と苛立ち、ユダヤ人の楽隊(東欧で音楽を業とする「アシュケナージ」と呼ばれるユダヤの人々でしょう)に混じってバイオリンを弾いては小銭を稼いでもいますが、これももろもろの事情で足が遠のき…そして妻は閉塞感のもとはそれだけではないと伝え…と、夫婦の間にいろいろと積み重なった人生の哀しみが語られます。
画家イリーナ・ザトゥロフスカヤが出版を意図せず、個人的に絵をつけたいわば「マイ画集『ロスチャイルドのバイオリン』」をもとに出版されていますので、非常にアーティスティックな作品に仕上がっています。文の情景を端的に表すというより、心象風景を描いたような絵が作品の哀感をさらに誘います。
私は露文の構成に明るくないのであくまでも感想なのですが、訳文にもう一工夫が欲しいように思いましたのでこの評価としたいと思います。
丸ごと芸術作品
(2005-02-11)
ヨーロッパでは、レストランや祭りで、バイオリンが演奏されることが多いような気がする。主人公ヤーコフは、寒村ともいえない寂しい村の棺桶屋だが、婚礼の祝いなどで、バイオリンを演奏する。村のこの同じオーケストラにロスチャイルドという大富豪と同じ名前のユダヤ人がいて、フルートを吹いているのだが...。短篇とはいえ、さすがチェーホフの小品。
物語もさることながら、この本の凄さ、絵であり、用紙であり、装幀にある。小さな表紙の画像でも、墨絵のような雰囲気は伝わるだろう。「挿絵」が「挿絵」にとどまっていない。といって、自己主張が強すぎて、読む邪魔になるわけではない。
不思議に思ったが『あとがき』を読んでわかった。ロシアの画家が手作りしていた本を、ロシア語を日本語にする以外をそのままに、そっくり再現したものなのだ。「画家」といっても、絵だけでなく、書籍デザインなどでも活躍しているとある。なるほど、なみならぬ芸術の雰囲気に満ちているわけだ。
そういうことで、時折、読み直しながら、絵を見直しながら、カバーを外し表紙を眺めている。
あとがきのページにある絵、どこか救世主のイコンのようでもあり、また「冬の日」の芭蕉を彷彿とさせるところもあったりする。珠玉の短篇だけでなく、この本一冊丸ごと芸術作品なのだ。
頭のなかでは物悲しいバイオリンの音が嫋々と響くかもしれない。

